コーチング

書評「謙虚になるな!」

前回、コーチングに関する書籍として「ザ・コーチ」を紹介させていただきました。本書は電子書籍版(Kindle)しかなく、一般書店では手に入らないものです。両者の違いは、「ザ・コーチ」はコーチングとは何かを知りたい人や、コーチングを受ける人・行う人をターゲットにした書籍で、本書は著者の人生観を描いたものです。(紙版が)書籍化されなかった理由はわかりませんが、自信をもっておススメできる1冊です。

本書の目次は以下となります。
まえがき
第1章:チャンスに選ばれる人と見放される人
第2章:なぜ?ケーキ職人から転職を繰り返してトップコーチになれたのか?
第3章:コーチは見た。幸せに成功する人の条件
第4章:コーチは見た! 選ばれる人の条件
第5章:「毒になるコトバ」×「薬になるコトバ」
第6章:「悪魔の質問」×「天使の質問」
第7章:セルフイメージをあげる10つのステップ
第8章:あなただけの物語
あとがき

21世紀を豊かに生きるヒント

 掲題の件について、幸福を感じる人とそうでない人の区別はどこにあるのか?という問いを投げかけます。そして、成功の手段・方法を手に入れて行動しただけでは成功しないとも言っています。私も独立されている中小企業診断士で成功している方とそうでない方を見てきましたが、高学歴あるいは一流企業出身ばかりとは限らないな、と感じています。(会社ではなく個人の名前で勝負するので当たり前かもしれませんが)

 著者はこの点について10年以上コーチとして支援してきた経験から、「得たいものを得られる人」「得られない人」の差は「自分とのかかわり(自分自身の取り扱い方)」であると述べています。それは、自分の長所や強みが見つかれば誰でも転職につけるはずだがそうとは限らないのは「自分を受け入れる自己受容感と自己信頼感が低い」からだと言います。このあたりが第1章・第2章で書かれており、非常に読みごたえがあります。詳細はぜひ本書を手に取り、お読みいただきたいところです。

では、自己受容感と自己信頼感を上げるにはどうすればいいでしょうか。結論は本書に書かれていますがその手前で大事なことは「あなたの大切な時間に、あなたが、あなたと対話する時間を含めているかどうか?」を挙げています。そして、「不感症で自己受容感が低い人は評論家になり、自己受容感の高い、感性豊かな人は創造者になります」と説きます。この一文に私は感銘しました。一生あなたと一緒にいる人は、親でも家族でも恋人でもなく、もう1人のあなた。そこでもう1人のあなたから否定されたら苦しくて仕方ない。このあたりは、以前紹介した「鋼の自己肯定感」とも通じると感じました。

人生が好転するには

そこから筆者は怒涛のようにたたみかけます。

  •  今やっていることは心から好きなことか?
  •  もし、生活のために稼がなくていいとしても、今やっていることを続けるか?
  •  どうすれば、今やっていることを好きになれるか?
  •  心から夢中になること、時間を忘れるくらい熱中することは何か?
  •  どんな時、何をしている時が一番幸福感を味わっているか?

そして、「いくつになっても、好きなことをして生きる道は開かれている」といいます。私は50代ですが、60代でも70代でも夢中に生きていきたい。そう勇気づけられました。

ことばの汚染に気づかないと大変なことになる

1,2章以降も「自己受容感」「自己信頼感」という言葉は多用されますが、第5章に入ると「言葉の重要性」に話が移ります。日本の自殺率が高いのはよく知られていることですが、1998年から急増し、以後も増え続け、2011年には3万人を越えました。この理由は諸説ありますが、筆者の考えでは「巷に毒になるコトバが溢れ出したから」と言います。

たしかにインターネットが流行りだし、iModeにより24時間いつでも使えるようになりました。匿名掲示板ができ、その後(匿名)SNSが流行りだすなど、個人の発信力が高まるとともに、毒となるコトバも目につくことが増えたと私も感じます。

これらの言葉は自己肯定感,自己受容感が低い方が発生させ、それが伝染していると筆者は言います。スマホ登場以来、情報過多の時代からは避けて通れなくなりました。自分も含め、こうした言葉の毒に汚染されない(影響を受けない)ためには、そうしたメディアにふれないことだけでなく、自己肯定感,自己受容感を高める必要があると改めて認識しました。

ポジティブ思考は無理

と、ここまで読み進めてみて、「考え方をポジティブにすること」が大切だなと感じたのですが、そうではないと筆者は述べます。以下引用となります。

なぜなら、考え方を変えるということは、まずは今の考えを否定しなければいけません。たとえば、ポジティブ思考になる。と自分に言い聞かせたとします。そうすると、潜在意識では、既に自分の中にあったネガティブ思考はよくないから、それを取り除いて・・と、自分の思考を否定しなければなりません。

謙虚になるな! 谷口貴彦著

では、思考を変えるにはどうしたらいいのか?それが「質問」です。有名な言葉ですが、「思考が行動をつくり、行動が習慣をつくり、習慣が人格をつくり、人格が人生をつくる」というこの関係性のトップにある「思考」に対し「質問が思考をつくり、」と書き足しています。これが実はコーチの役割です。思考を変えるには、質問を受け、自分で考えることです。そして、他の思考に移動させてばよいと筆者は述べます。

そして最終章である第8章は実は1ページしかありません。それは「あなたらしく」という言葉。お金や知識ではなく価値観や信念や夢。そしてこう締めくくっています。「謙虚になって、他の誰かになろうとするのは今日で終わりです。」 謙虚という単語が出てくることは少なく、先述の自己受容感、自己信頼感が大事で、そのために「謙虚になるな!」ということです。

私が本書で学んだこと

本書は谷口氏の人生観を書いたものだ、と冒頭に書きましたが、本人はあまりにも名高いプロコーチ。コーチングとは良質な質問をすることで、新たな気づきを生み出すことであるとあたらめて感じました。私は「コーチ探せる」では無料体験セッションを行っています。と同時に、私も自分の価値観に基づいた物語を紡いでいきたい。そう思いました。

謙虚になるな!: セルフイメージを変えて 恋もチャンスもお金も引き寄せる! Kindle版