書籍紹介

起業の科学

既に大ベストセラーになっており、本屋さんでも平積みになっているので、細かい説明は省きますが、黄色の表紙が実によく目立つこの本。私は何回も読み直しました。そして薦める理由はいくつかあります。

  • 「スタートアップ」と「スモールビジネス」とでは全く別物であるということ。
  • 起業に失敗はつきものだが、この本を読めば失敗の確率を(ゼロにはできないが)少なくできるということ。
  • 膨大な数の起業家と会い、書籍を読み、実践に裏付けされたものであり信憑性が高いこと。
  • スタートアップでは「一般的には常識とされていること」が通じないこと。
  • 中でも「ビジネスモデルキャンバス」はスタートアップには不向きであるということ。(代わりにリーンキャンバスを使う)

などなどであるが、やはり気になるのは「スタートアップ」と「スモールビジネス」の差ですね。実際、起業家の方々でも混同するというので、一般読者が読んで同じように混同するのも無理はないです。自分が(中小企業診断士として)対象とするのは主に「スモールビジネス」であり、スタートアップは完全に別物であるという認識を持つべきである、ということがよくわかりました。そもそもビジネスの進め方や考え方が違うのだから、それは同じにすべきではない、ということなのでしょう。

この本、もともとスライドが2500枚以上あって、書籍を買うと(期間限定で)田所氏本人からもらえる。だが、スライドだけ見てもなかなかわかりづらい。本人の解説がないからだ。書籍であればそこの解説の部分をカバーしてくれるので、膨大なスライドと本文を突き合わせると、より詳細に本書の内容がわかるようになっている。(実に素晴らしい!)

気になった点として、5章立ての中で「第1章 アイデアの検証」だけで1/3を占めている点があげられます。つまり、スタートアップの本質は「何が課題なのか?」をまず突き詰めるところが最も重要であることを教えてくれます。ただし、その一方でビジネスとして成功する要因の最大のポイントは「タイミング」だというのだから実に難しい。なぜ今なのか?2年前でも2年後でもなくなぜ今なのか?がスタートアップには問われます。この他にも数々の示唆をこの本は与えてくれるので、興味のある方はご一読ください。