コーチング

書評「ザ・コーチ」

 春になり、コーチングについて話をする機会が増えました。その中で「おススメの本ありますか?」と聞かれることが多々あります。コーチングに関する書籍は数多く、流派もあります。ただ最初の一歩として、私はこの本(ザ・コーチ)をおススメします。理由は「読みやすい」のが第一ですが、他にもあります。もう少し当記事を読み進めてください。

小説仕立てで面白い。コーチングと切り離しても一読の価値あり。

 書き出しで話が逸れてしまうのも変ですが、この「ザ・コーチ」は「ザ・コーチ2」という続編(といっても全く別の話ですが)があり、「2」のほうが先に書かれたという話を聞いたことがあります。が、書籍化は本著が先なのは言うまでもありません。それだけ、本著の作品としての出来栄えが素晴らしいということです。

 本著の良さはまず「読み物として面白い」ことにつきます。なので、どなたもおススメできます。コーチングとは何かを知りたい人、コーチングを受けたい人、コーチングを習いたい人、どの側面から見ても読んでいて楽しいです。「コーチング」という言葉を抜きにしても多くのビジネスマンに読んでほしい1冊です。

うまく売れない営業マンが人生の転機を迎える。そんな時に現れる老紳士

 主人公の営業マンがふとしたことから老紳士と知り合うところからストーリーが始まります。が、意外にもあっさり、その老紳士の正体が名前を聞いただけでバレます。その日から老紳士の話に耳を傾ける主人公・星野雅彦。そこから彼の”変わりざま”がこの本の骨子になります。

 いつの間にか星野は老紳士の話に引き込まれる。そして、老紳士の教え通りに職場で実践する星野。(注:途中、図解が入ります。これが頭の整理にとても役立ちます。) 5つのことを老紳士は星野に問いかけ、それぞれの意味と関連性について考え、1歩1歩歩みを深めていくところ。そして、それらを妨げるものとその外し方。(注:実際にはこの”外し方”をどう取り扱うかがコーチングの現場では重要になります。)

突然の別れ。そして・・・

 こうして、着実にビジネスで、人生で、成果を出していく星野であるが、その過程はぜひ本著を手に取って読んでみてください。そして、ある日、急にこの老紳士が姿を星野の前から姿を消してしまいます。その後、すぐに再開し、ここで小休止。話は3年後の世界へと移ります。

 ここからエンディングへと話は向かいますが、ようやく「コーチング」という単語が出てきます。ただ、それはコーチングの解説というよりも、それまで歩んできた星野雅彦の”道のり”そのものになります。彼が老紳士と重ねてきた対話の数々。それがまさにコーチングの本質だった、ということになります。

 実際には、主人公星野のようにめざまじい変化を遂げるかどうかは別です。ですが、彼の仕事観・人生観が大きく変わっていくのがわかります。それを支える老紳士。決して彼は物事を「教えよう」とはしません。あくまでも星野の考えを実現するためにスパイス的に「コーチングの要素」を散りばめます。それだけではややもすると単語の羅列になってしまいがちですが、前述のように図示化してくれるのでとてもわかりやすいです。

 私もコーチングの本は複数読みましたし、これから紹介を続けるつもりですが、「まずはコーチングってどんなもの?」かを知りたい方におススメです。そして、私も読み返すうちに、「あ、こういうところが本質なんだな」と改めて思いました。タイトルこそ「ザ・コーチ」ですが、コーチングというものとは別にしても、ビジネスマンにとって必携の1冊。なので、私もコーチング本としての紹介はこの本と決めていました。一読の価値ありです。刊行されたのは10年以上前ですが、色褪せることはありません。(おわり)

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