書籍紹介

書評「鋼の自己肯定感」(2022年上半期一推し)

「最先端の研究結果×シリコンバレーの習慣」から開発された“二度と下がらない”方法
これが今回紹介する「鋼の自己肯定感」のサブタイトル。正直驚きを隠せなかった。シリコンバレーや研究結果といった単語は私の目には入りませんでした。そうではなく(自己肯定感が)”二度と下がらない”というのがものすごく新鮮に映りました。なぜなら私は自己肯定感は上がったり下がったりするもので、”下がらない”なんてことはありえないと思っていたから。もし下がらない方法があるのなら、それはぜひ知りたい。そして、そうなりたい。それが本書を手に取ったきっかけでした。

プロローグ 鋼の自己肯定感は誰でもいつからでも育てられる
第1章 シリコンバレーのエリートたちはなぜ自己肯定感が高いのか
第2章 99%の人が自己肯定感のことを勘違いしている
第3章 自己肯定感を上げ下げする4大要因
第4章 鋼の自己肯定感を手に入れるためのプラン
第5章 鋼の自己肯定感を育てるための「言葉」のワーク
第6章 鋼の自己肯定感を育てるための「思考」のワーク
第7章 鋼の自己肯定感を育てるための「行動」のワーク
第8章 誰でも自己肯定感は上げられる。そして二度と下がらない!
エピローグ

上記がこの本の章立てですが、ここでの大きなポイントは「自己肯定感」という言葉の定義づけです。筆者も述べていますが、「自己肯定感」という言葉は人によってとらえ方が違います。なので、まずはそこをしっかり定義しないと、人によって言葉の受け止め方がブレてしまい、その結果、”自己肯定感迷子”になってしまいます。本著はそこをぶらさないような工夫がなされているため、どこまで読み進んでも、説得力が途切れることはありません。心憎いばかりの配慮だと感じました。さらに親切なのは、「自己肯定感」という言葉の定義が人によって異なることがプロローグで前出しとして書かれており、わかりやすさが増していることです。

また、その定義を第2章にもってきているところも行き届いた配慮です。普通に考えれば、言葉の定義を冒頭の第1章に持ってきて、そこから筆者の持論を展開するのがセオリーと思うのですが、あえてそうしていないように見えます。では第1章には何が書かれているのか?というと、インパクトの強いシリコンバレーでの出来事や考え方です。私が思うに、日本という国は単一民族・単一言語のため、多様な国々の多様な考えのなかで生きている人たちに比べ、悪い意味での”狭い常識”が形成されやすいと考えています。なので、もし言葉の定義を解きほぐさず「自己肯定感とは」という唐突に出てくると違和感を覚えるでしょう。そこでまず、「世の中(シリコンバレー)にはこういう人たちがいる」と事実のみを伝えています。従って、「ああ、そうなのか」とスッと入ってきます。そこには「私はこう思う」といった解釈が入る余地はありません。

では、第1章に出てくるシリコンバレーの人々の考え方はどんなものでしょうか? いくつか例が出て来ますが、端的に言うと「どんなことあっても自分は自分」ということ。会社をクビになろうが、親が離婚していようが関係なし。年齢・性別・出身地・食習慣・宗教、そういったものがカオスのように混在している街、シリコンバレー。そこにいると自分が思い込んでいた「常識」というものは「人によって異なるもの」だということを本著では教えてくれます。そして、その中で生きていくと「自分軸」というものが形成されていくことが記されています。その結果、学校教育(※大学、大人になっても)の段階で自己肯定感が高まっていく。そんな話が具体例を伴っていくつも記されています。

「自己肯定感」という言葉の正体

そして第2章。筆者は自己肯定感をこう定義しています。「ありのままの自分を無条件に受け入れ、愛すること」。もっというと(何もできない赤ちゃんに対して)ただ存在してくれるだけでいいと思う感情。この存在レベルの愛情こそが真の自己肯定感だと筆者は述べています。人間、生きていればいいことも悪いこともあります。失敗したり、落ち込んだり、そうしたことは誰にでもあること。それらも全て含まれます。

過去も含めてありとあらゆる自分を無条件に受け入れ愛すること、それが真の自己肯定感だ

「鋼の自己肯定感」宮崎直子 より

さて、ここで厄介なのが、「自己有用感」「自己効力感」といった単語と「自己肯定感」が混ぜこぜになってしまうことです。それが非常に危険であることを筆者は述べています。ここが、本書と他の「自己肯定感」に関する本との大きな差なのですが、どこがどう違ってどう危険なのかについては、ぜひ本書で確認していただきたいです。

自己肯定感を上げ下げする4大要因

そうは言っても、やはり自己肯定感は上がったり下がったりするもの、と思う方もいるでしょう。正直に言うと、私自身、ものすごく自己肯定感が低いです。その理由について筆者は「”条件付き”で自分を肯定したり、否定したりしているからだ」と説きます。本書にはそれらに該当する”条件”がいくつも記されていますが、以下が代表的なもの4つになります。これらの条件を一切取り払って「無条件」に自分を受け入れ愛すること、そのままの自分を肯定することが「自己肯定感を上げ、決してさがることのないものにすること」だということです。

  1.  他人からの評価
    例:友人に女子力が低いと言われて自己肯定感が下がった。
  2.  他人との比較における自己評価
    例:Aさんがものすごい人脈を持っていることを知って自己肯定感が下がった。
  3.  失敗と成功
    例:起業に失敗して自己肯定感が下がった。
  4.  不測の事態
    例:病気や事故で寝たきりになり自己肯定感が下がった。

逆に言えば、この4大要因がどのように変化しても、それに振り回されることなく、自分を受け入れ愛する術を学べば、どんな状況でも下がることのない鋼の自己肯定感を手にすることができるということである。

「鋼の自己肯定感」宮崎直子 より

鋼の自己肯定感を手に入れるには?

続く3章では、上記の4大要因についてさらに詳しく述べています。そして、4章と5~7章で「鋼の自己肯定感」を育てるためのプランとワークが書かれています。詳細は省きますが、基本はアファメーションです。

ただ、ビジネスマンにできることとして、以下の行動が推奨されているので、ここに紹介しておこうと思います。

  •  適度なエクササイズ
  •  大自然と触れ合うこと
  •  昼寝をすること

そして、最終章となる第8章では、本著でもっとも重要なこと、つまり、鋼の自己肯定感を持つことは「自分が常に世界一の親友であること」だと述べています。いうまでもないことですが、人生で一番長い時間を一緒に過ごすのは自分自身、そしてそのために必要な自己肯定感を形成するものに必要なのは「決意」と主張されています。24時間365日、自分の味方になることを決意する。そう決めることで、人生は驚くほど好転する。筆者のゆるぎない信念で、本書は締めくくられています。

私が本書で学んだこと

以上が本書の概要ですが、私が(自己肯定感以外で)学んだことがあります。それは「傷ついている人が、他人を傷つける」というところ。これは私にとって新しい視座でした。「傷ついている人=犠牲者」という思い込みがどこかにあり、その人が加害者になることなどない。そう思っていました。わかりやすく言うと「罪を憎んで人を憎まず」ということになるかと思いますが、本書ではもっと奥深い話が書かれています。

他人を赦すことで、あなたは自分を赦せるようになるし、自分を赦すことで、他人を赦せるようになる。

「鋼の自己肯定感」宮崎直子 より

この意味が本当に腹落ちすれば、先の要因1『「他人からの評価」に振り回されること』が劇的になくなるとのこと。単に印象的だっただけでなく、モノの見方・考え方を変えてくれる思考だと感じました。それが「2022年上半期一押し」とタイトルに記した理由です。(おわり)

鋼の自己肯定感 ~「最先端の研究結果×シリコンバレーの習慣」から開発された“二度と下がらない”方法 (かんき出版